確定拠出年金の受給

 

 ここでは、60歳の誕生日になり、DCを受取る場合の詳細を解説します。

 

 私の経験では、DC加入や年金の積み立て・運用については、ホームページや各種資料に細かく説明されているのですが、その受け取り方法は詳細な記述がありません。金融機関は支払いには消極的、という姿勢が如実に表れている典型的な例ですね。

 

(最近は少し改善されてきているようです。)

 

DCはいつ受け取れる?

 

 基本的にDCは60歳の誕生日を迎えると、老齢給付という形で、積み立てた年金を受取る事ができます。(注:積立期間、本人死亡等例外もあります)

 

 では、DCの老齢給付金を受取るには、具体的にどのような手続きが必要なのか、またそれらに関連して注意すべき点などを順番に解説します。

 

60歳の誕生日に必ず受取るの?

 

 60歳で受け取った方が良い場合もあります。

 

 最後のDC受け取り超裏ワザその2も必ず読んでくださいね。

 

 60歳の誕生日を迎えたら、DCの老齢給付を受取る事ができますが、75歳の誕生日の前までそのまま運用を続けることもできます。

 ( 2022年5月~)

 

老齢給付の受取は60歳の誕生日以降75歳の誕生日前までの間で自分で決めることができます。 

 

 なお、給付は75歳の誕生日の前まで繰り下げる事が可能と書きましたが、もし75歳になっても手続きをしなかった場合は、その時点で全ての商品を売却し、その資産を一括で支払う処理が行われます。 

 

 それでは、受取を遅らせる(繰り下げと言います)とどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

 

老齢給付の受取を遅らせるメリットは?

 

 60歳から支給開始(最大75歳の誕生日前)までの間、運用指示が可能です。うまく運用すれば、その間に資産を増やすことができます。

 

 え?
別に繰下げなくても、確定拠出年金を一括で受け取り、自分で資産運用しても同じじゃないの?という声が....

 

運用益に税金がかからない

 

 給付を遅らせるメリットを理解するには、確定拠出年金の税制を理解する必要があります。

 

 通常、

株式や投資信託等の利益に対しては20%+復興税が課税されます。では確定拠出年金で利益が発生した場合、税金はどうなるのでしょうか?...

 

 答えは、

「資産運用で利益が生じたとき」については、すべて非課税となっています。預金や生保の利息、債券の利払い、投資信託の売却益や収益分配金など、確定拠出年金の運用で得られた収益のすべてに、税金がかかりません。

 

 NISAと違って、スイッチング(他の商品への切り替え)も可能ですので、NISAより優れた非課税投資が可能です。但し、逆に損が出ても、無かったことに。(そこはNISAと同じです)

 

 これがどれくらいすごい事かというと、仮に1,000万円を年5%の運用益で、60歳から70歳の10年間運用した場合、以下のようにその差(所得税)は約127万円となります。

 

1,000万円×1.05^10=1,629万円
629万円×20.315%≒127万円  (株式等の所得税税率:20.315%)

所得税恐るべし!!

 

注意:2024年1月からNISA制度が大幅に拡充されます。

生涯投資枠も1800万円まで非課税で投資できますので、NISAで運用する方が良くなります。DC、iDeCoは受け取り時に退職所得、又は年金として雑所得となるため、それらの控除額を超えると所得税と住民税を払う必要があります。

方やNISAの場合は、運用益は全て非課税で、受け取り時も全額非課税です。

 

 

不況で資産が目減りしているときは回復するまで待つ

 

 運悪く、60歳の誕生日に不況で資産が目減りしていた場合、景気が回復するまでしばらく待つという方法が考えられます。

 

 15年の間には、やがて景気が回復する時期も訪れると考えられます。DC制度もこのような事態に備えて、受け取りの時期に幅を持たせているようです。

 

超裏ワザ的な繰下げのメリットをもう一つ...

 

 確定拠出年金を老齢一時金として一括で受取る場合、退職金と同じく「退職手当等」とみなされて、税制上の優遇措置がとられています。

 

 つまり、

退職所得控除の適用となるのですが、私のように、数年前に退職一時金を既に受け取っている場合、確定拠出年金の扱いはどうなるのでしょうか?

 

 確定拠出年金を一時金で受け取る場合のルールが以下のようになっています。

 

◆掛金の払込期間が勤続年数とみなされます。従前の企業年金等からの制度移行があった場合には、その制度移行により算入された期間を含みます。

 

◆本年および前年以前19年以内(注1)に別途退職手当等が支給されている場合は、退職所得控除額の調整が行われます

(注1:2022年のDC制度改正により14年が19年に延長されました)

 

 例えば54歳で早期退職した人が、75歳の前まで支給を繰下げると、退職金を貰ってから19年以上経過する事になり、退職所得控除の調整が行われない!という事になります。

 

 当てはまる人はほとんどいないとは思いますが、54歳までに会社をやめて独立しようと考えている人は、検討の余地があるかも知れませんね。

 

 給付を遅らせるメリットは、ほとんどの人が知らないようです。金融機関の説明でも、遅らせる意味について説明している所は見たことがありません。

 

 もともと、

国民年金の支給(65歳)までの所得を補完する意味合いが強いため、(財務省は)富裕層に有利と思われる、非課税の資産運用が可能な事を知られたくないのでは?という気もします。

 

老齢給付を遅らせるデメリットは?

運用益が目減りしてしまうリスク

 

 60歳の時点では運用益が出ていたので、さらに増やそうと運用を続けていたら、大不況になり、75歳の誕生日の前までに回復しないというケースが考えられます。

 

 つまり、

さらに運用益を増やそうとしたら、逆に運用益が目減りしてしまうリスクがあります。

 

 60歳以降は積立ができませんので、ドルコスト平均法による時間分散投資ができません。60歳の時点で運用益が出ている場合、老齢年金での受取を検討した方が良いかもしれませんね。あまり欲張らないという姿勢も資産運用には必要です。

 

◆ DCの受け取り超裏ワザその2

 

 雇用延長でDCは60歳で受け取り、退職金は65歳で受け取ると超お得。

 

 通常の退職金等は以下のルールが適用される!

 

 本年および前年以前4年以内に別途退職手当等が支給されている場合は、退職所得控除額の調整が行われます。

 

 これは4年以上空けて退職金を受け取ると、調整が行われないという事です。

 

 DCは60歳以降いつ受け取るかを自分で決めることができます。そこで、60歳になったら、一時金で老齢給付を受け取り、5年目の65歳で通常の退職金(確定給付年金:DB等)を受け取ると、前年以前4年以内に該当しなくなります。

 

 つまり、DCで積立期間をフルに退職所得控除を受け、さらにDBで勤続年数分の退職控除をフルに受けることができます。

 

 これはぜひとも検討して下さい。

 

60歳でDCを受け取り、NISAで運用すれば、非課税で運用する事が可能となります。

 

これが、

DBを先に60歳で受け取り、DCを65歳以降で受け取ると対象外ですので、間違わないようにしてください。

 

 DCは前年以前19年以内に退職手当等が支給されている場合は、重複期間の調整が行われてしまいます。