意外と知らない確定拠出年金(DC)

関連ニュース

2020年5月29日 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立

2018年5月01日 確定拠出年金制度等の一部を改正する法律の施行

2016年5月24日 確定拠出年金の改正が国会で承認


確定拠出年金(DC)ポイント

 確定拠出年金(以降DCと表記)について私自身の経験などを踏まえて、基本的な事から、あまり知られていない内容まで、利用者の目線で、できるだけわかりやすく解説します。

 

 DC制度のメリットは税制のメリットで解説していますのでそちらを参考にしてください。

 

また、

DCのメリットは色々なサイトででも解説されていますので、ここではあえてDC制度で注意すべき点について解説したいと思います。

 

 調べれば調べるほど、疑問が次々と沸いてくるDC制度。

 

特にDCの受取りについては、なぜか金融機関の説明は不十分で、わからないことだらけ

わざと隠しているのではないかと疑いたくなります。

 

あまり知られていない重要なポイントや、DCの疑問を調査した結果も踏まえて、こちらに掲載しました。

 

独立系のFPとして、利用者の目線で知っておくべきルール、課題や問題点をまとめました。ぜひ参考にしてください。

 


意外と知らない受給のルール

2023/10/02 更新

2020/07/25 追記

 

 確定拠出年金(DC)を分割で受け取り中に、本人が死亡した場合の相続税

 ※ 2020年7月20日に国税庁タックスアンサーに電話で確認した結果をお知らせします。

  

DCを年金として受給中に本人が死亡した場合、残額を一括で死亡一時金として相続人に支払われます。この時の残額はみなし相続財産として課税対象となりますが、この時に支払われる、死亡一時金は年金受給権の相続となりますのでご注意ください。

 

 このことは、金融機関のHPや資料では、死亡一時金として500万円×法定相続人数の非課税限度額ががあるような(紛らわしい)説明がありますが、分割で受け取り中だった場合は死亡退職金の非課税限度額はありません。

 

DCを分割で受け取る前に本人が死亡し、残額を法定相続人が受け取る場合は、死亡退職一時金のみなし相続財産として、500万円×法定相続人数の非課税限度額があります。

 

 すぐには信じられない内容ですが、国税庁の回答ですので間違いありません。

このような万が一の事も踏まえて分割で受け取るか、一括で受け取るかを決めましょう。

 

 もし疑問に思われる方は、ご自身で国税庁のタックスアンサーに問い合わせてみてください。

 

◆退職一時金として受給時に、退職所得として課税される

 

 例えば、個人型確定拠出年金 (iDeCo) の場合、積立金は全て自分のお金です。

 

自分のお金を、老齢年金として受取る時に年金所得として課税対象の所得となります。

 

もちろん、

退職所得控除の対象ですが、その控除額を超えると、自分で貯金したお金を、受取る時に課税されるというポイントはあまり知らされていないようです。

 

 詳細は確定拠出年金の受給をご覧ください。

 

◆年金として分割受給時に、年金所得として所得税が天引きされる

 

 老齢年金として分割で受取る時に所得税として約8%が源泉徴収されます

 

もちろん、年金所得控除の対象ですが、年金所得控除を受けるためには(取り戻すには)確定申告が必要です。

 

 確定拠出年金は他の公的年金等と合算され、年金所得として計算されます。公的年金が多い場合には、累進課税で税率が高くなる可能性もありますので、確定申告すべきか否かを確認する必要があります。

 

 源泉徴収だけで済む人でも、多くの場合確定申告をすることで源泉徴収された所得税が還付される可能性があります。 

  

 もし税率が8%以上になる場合は、そのままにしておきましょう。間違っても確定申告して追加の税金を払わないようにしてください。

 

 ただし、

老齢基礎年金老齢厚生年金をふくむ公的年金等の収入が400万円を超える、または、公的年金等以外の所得が20万円を超えるときには源泉徴収がされていても確定申告が必要になります。 

  

 詳細は確定拠出年金の税制のメリットをご覧ください。知らないで、取られっぱなしのお年寄りも多いと思います。

 

参考:源泉徴収される税率

 

所得税額 = { 年金の支払額 -(年金の支払額 × 0.25 )}× 0.1 × 1.021 (復興特別所得税)

 = 7.6575%

 

住民税は源泉徴収されません。

当年分の住民税は他の所得と合算し、翌年請求されます。

 

◆年金商品でも、確定年金、終身年金で受取れない場合がある

 

 年金商品の説明には確定年金、終身年金で受取れると書かれていても、一般的にiDeCoの場合は、確定年金や終身年金では受取れないようです。

 

ご自身のDC運用機関に事前に確認してください。詳細はDCの受取り方をご覧ください。

 

◆最大75歳の誕生日前まで、受取りを遅らせることができる

(2022年5月以降)

 

 60歳の誕生日以降老齢年金を受取る事ができますが、最大75歳の誕生日の前まで受給を遅らせることができます。メリット、デメリットがあり、詳細は確定拠出年金の受給をご覧ください。

 

 ※ 繰り下げている間は口座管理料が発生します。定期預金で利回りがほとんど無い場合は、収益がマイナスになりますので十分ご注意ください。

 

◆受給の申請方法

 

 DCを受給する手続きについて、詳細な手続きが公開されていない場合が多いようです。どのような書類が必要で、記入にあたり、どのような注意が必要でしょうか?

 

 特に分割で受取る場合は、運用も継続しますので、注意が必要です。詳細はDC受給の申請方法をご覧ください。

 

◆最速で、いつ老齢給付金を受取れる?

 

 例えば、7月が誕生日の場合、8月に商品購入が完了します。

 

その後、国民年金基金連合会より還付結果確認データを運用機関が受信し、「裁定結果通知書」を受給者の自宅へ送付されます。

 

その後、申請書類を請求、記入、提出し、各種書類が適切に処理されたとして、9月に給付額が確定し給付されます。

 

  最短で誕生月の2か月後の受取りとなります。

 

◆60歳でも受取れない場合がある?

 

 通算加入者等期間の長さによって、積み立てた年金資産の受取が可能な年齢が変わってきます。

 

下表のこの年齢に達したときに、一時金または年金としての受取が開始できます。50歳以降にDCを始める場合は注意が必要です。

 

期間 受取開始が可能な年齢
1ヶ月 65歳
2年 64歳
4年 63歳
6年 62歳
8年 61歳
10年 60歳

 

なお、iDeCoの場合は、通産加入期間は60歳までの期間で判定されます。

 

企業型DCを60歳以上も積み立てている場合は、加入期間は最大で70歳(2022/5~)までとなります。

それぞれの企業のDC制度を確認しましょう。

 


意外と知らない運用のルール

運用でマイナスは致命傷

 

 DCは損が発生しても他の資産運用口座と損益通算することができません。

 

また、

損を翌年に繰り越す事もできません。(DCは、もともと利益に課税されないので、損を繰り越す意味も無いですが)

 

つまり、DCで損が発生しても、頑張ってプラスにするしかありません。この事実は知らない人も多いのではないでしょうか。

 

◆スイッチングに時間がかかる

 

 運用している商品Aを売却して、商品Bを購入する事をスイッチングと言います。

 

これを行うのに意外と日数が必要です。

 

商品Bが大きく値下がりしたので、購入するためにスイッチングの指示をしても、実際に商品Bを購入できるのは7~9日後という場合も多いようです。

 

◆最後の積立はいつ?

 

 DCの拠出は原則60歳の誕生日の前まで(注1)ですが、具体的にどのような扱いになるのでしょうか?

 

例えば7月が誕生日の場合は、最後の積立は6月分の拠出金が、7月に引き落とされ最後の積立となります。また、実際に商品の購入は8月となります。

 

 注1:企業型DCは、会社によっては最長70歳の誕生日の前まで積み立てる事が可能です。お勤めの会社に確認してください。(2022/5~)

iDeCoの場合、国民年金任意加入又は会社員として厚生年金に加入している場合、65歳まで加入することができます。

 

◆積立額は上限までしない方が良い場合も?

 

 積立時の所得減税と、受給時の所得税を比較して、減税額が最大となるのは必ずしも限度額まで積立てるのが良いとは限りません。

 

 現在の所得によっても変わりますので、損の無いよう、受け取りも含めた税額がどうなるか計算して、積立額を決定しましょう。

 

 詳細は第1号被保険者とDCを参照ください。

 

第3号被保険者はDCのメリットはほとんど無い?

 

 2016年のDC法改正(2017年施行)により、第3号被保険者もDCに加入できるようになりましたが、DCに加入するメリットはほとんどありません。詳細は第3号被保険者とDCを参照下さい。

 

◆企業型DCで選択型の注意点

 

 選択型とは、従業員が「給与の一部を減額して掛け金を捻出する」か、「掛け金を出さずに(選択制の確定拠出年金に加入せずに)、その分を給与・賞与などとしてもらう」かを選べる制度です。

 

 但し、給与から掛金を出す場合は見かけ上給与が下がります。すると、目先の厚生年金保険料は下がりますが、将来受け取る厚生年金も減ってしまうということ。また、健康保険から支給される出産手当金、傷病手当金、雇用保険からの失業給付、育児、介護休業給付金などの社会保険から受け取るお金も減ってしまいます。

 

 メリットとデメリットをよく理解したうえで、選択してください。 

 「どちらか得かよくわからない」という方は個別にご相談ください。

 

 

フェイスブックにコラムを掲載していますので、そちらも参照ください。