第2号被保険者(給与所得者、公務員)とDC

 

 第2号被保険者は働いている企業がどの企業型DCを採用しているかによって、個人型DCに加入できるか、個人型DCでいくらまで積み立てできるかが変わります。(下図の個人型DCを参照)

 

 例えば、企業型DCを採用している企業の社員が個人型DCにも入ると、月額5.5万円(年間で最大66万円)まで積み立てる事が可能です。

 ※ 事業主掛金を含む

 

 第一号被保険者と同様、積立てた金額は全て所得控除されますが、受取り(老齢年金受給)時に退職所得、又は年金所得として課税対象となります。

 

 例えば退職所得控除額は最初の20年までは40万円/年ですので、66万円を積み立てると、退職所得控除額を超えると考えられます。

 

 単純に66万円の上限まで積立てて、所得控除の恩恵を最大限受けるのが良いかは、積立時の減税額と、退職金受取り時に払う所得税とを、合算して考える必要があります。 

 

 

◆DCに入った方が得なの?

 

<ケース①>

 仮に20年間、企業型DCを最大の66万円分積立てた場合を計算してみましょう。

 (計算を単純にするために、復興特別所得税は対象外としています)

  

・ 所得税の減額

 

課税所得金額320万円、所得税10%(注2)と仮定すると、以下の計算により、退職所得税との差し引き115.75万円 が実質の所得税減額となります。

 

所得税減税額 = 66万円 × 10% × 20年 = 132万円

 (注2)実際には課税される所得額によって減税額は異なります。(所得税の速算表参照)

 

退職金として受取り時に、以下の計算により退職金の所得税は16.25万円となります。(運用益は0%、他に退職所得は無いと仮定)

 

 DC給付金 = 66万円 × 20年 = 1320万円

 退職所得控除 = 40万円 × 20年 = 800万円

 退職所得 = (1320万円 - 800万円 ) ÷ 2 = 260 万円  

退職所得税額 = 260万円 × 10% - 9.75万円 = 16.25万 

  (退職所得の速算表参照)

 

差引所得税減税額 (132万円 - 16.25万円) = 115.75 万円

 

 

・住民税の減額

以下の計算により、退職住民税との差し引き106.3万円 が実質の住民税減額となります。

 

 住民税は積み立て時の減税額が10.025% (所得割の税率)

 66万円 × 10.025% × 20年 = 132.3万円

 

 受け取り時の退職所得税が一律10%

 退職所得住民税 = 260万円 × 10% = 26万円

  

差引住民税減税額 (132.3万円 - 26万円) = 106.3 万円

 

 

<ケース②>

 では、収入などの条件はそのままで、積立金を40万円にした場合を計算してみましょう。

 

・所得税の減額

 

 所得税減税額 = 40万円 × 10% × 20年 = 80万円

 DC給付金 = 40万円 × 20年 = 800万円

 退職所得控除 = 40万円 × 20年 = 800万円

 退職所得 = (800万円 - 800万円 ) ÷ 2 = 0 万円

 退職所得税額 = 0万円

 

差引所得税減税額 (80万円 - 0万円) = 80 万円 

 

 

・住民税の減額

 

 住民税は積み立て時の減税額が10.025% (所得割の税率)

 40万円 × 10.025% × 20年 = 80.2万円

 

 受け取り時の退職所得税が一律10%

 退職所得住民税 = 0円

  

差引住民税減税額 (80.2万円 - 0万円) = 80.2 万円

 

 

 結論:単純に所得税・住民税だけで考えると、DC積立てを最大にして所得税を減らした方が、いずれの場合もお得と言えます。

 

 注意:企業型DCのタイプにより計算結果は異なります。

 厚生年金受給額の減少なども含め、総合的にどちらが得かは個別に計算する必要があります。

 

◆DCで、いくら積立てるのが良い?

 

 退職所得控除は最初の20年は40万円、21年目以降は70万円の退職所得控除があります。そのため、上記の計算例でわかるように、退職一時金として受取りを考えているなら、最初の20年は40万円/年、21年目からは70万円/年より多く積立てると、受取り時に退職所得として課税されます。

 

 それより多い額を積立てても、結局受取り時点で課税されるので、減税効果が薄くなってしまいます。この計算例では運用益は0と仮定していますが、運用益まで含めて考えると、逆に増税となる可能性もありますので注意してください。NISA等他の非課税制度と合わせて、非課税制度を最大限利用しましょう。

 

 注意:課税される所得額が330万円(所得控除が170万円と仮定すると、控除前の所得が500万円)以上の人は、累進課税により税率が高くなり、その分所得控除による減税額も大きくなりますので、積立額の正確な計算が必要となります。概算で、所得控除前の年収が600万円以上ある場合は、積立額を上限まで増やした方が、減税効果が大きくなる可能性が大きいと言えそうです。

 

 このようにDCは収入と積立額、運用益、積立期間によって節税効果が大きく変わります。自分はどれくらい積み立てるのが良いかわからない場合は、FPに相談しましょう。

 

出典:厚生労働省年金制度基礎資料より


所得税の速算表

出典:国税庁ホームページ

出典:国税庁ホームページ

参考:2.1%は復興特別所得税です。