政府発表の令和5年度税制改正大綱の解説

<2022年12月27日更新>

 

2022年12月23日 税制改正大綱が閣議決定されました。

 

今回は岸田内閣の成長戦略としてNISA制度が抜本的に改正され2024年1月から施行されます。庶民にとっては嬉しい税制改正となっています。

また相続税の節税対策として多くの人が利用している、暦年贈与(毎年110万円までの贈与が非課税)の相続財産への持ち戻し期間の変更が行われます。

 

一般市民に大きな影響のある、この2つについて解説します。

 

参考:令和5年度税制改正大綱
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2023/20221223taikou.pdf


NISA制度拡充

図のように、NISAの上限金額が大幅に拡充され、期間も恒久化という大盤振る舞いです。

なお、2024年に予定されていた、2階建てのNISA制度は廃止となります。

 

ポイント1:制度の一本化

今まで、つみたてNISAと一般NISAはどちらかを選択する必要がありましたが、2024年からは両者が統合され、非常にシンプルでわかりやすい制度になりました。

もう、どちらにするか悩む必要はありません。

 

ポイント2:投資枠が最大で年間360万円に拡大

現行のつみたてNISAに該当する部分は年間120万円に拡充、一般NISAは年間240万円に拡充され、全体では年間360万までNISAで投資することができます。

もはや、少額とは言えない金額です。一般の会社員では持て余すほどの枠と考えられます。

 

ポイント3:売却した枠は復活する!

現行制度では売却した非課税枠は復活しませんが、新NISAでは、売却した非課税枠で新たな商品を購入できるようです。

但し、表にあるように、全体で1800万円を超えて投資することはできません。

 

NISA概要図
NISA概要図 (筆者作成)

◆ 現行制度は非課税期間終了とともに終了

2024年以降、現行のつみたてNISA、一般NISAでの新規投資は2023年で終了します。投資した投資信託や株式は非課税期間終了時点で終了することになります。

つみたてNISAは2042年末で非課税期間終了、一般NISAは2027年末で終了となる予定です。

 

◆ 現行NISA口座の商品は新NISAには移換できない

2024年から始まる新NISAは、今までのNISAとは別と考えてよいでしょう。

口座にある商品はどこかのタイミングで売却するか、非課税期間終了後、課税口座に移管することになります。

 

◆ ジュニアNISAも2023年末で終了

<2022/12/28 修正>

もし、5年後に本人が未成年の場合は、ジュニアNISAの管理口座に自動的に移管され、引き続き配当金などを非課税で受け取ることができます。

成人していた場合は、課税口座に移す、又は売却することになります。

 

 

2024年1月1日以降は、年齢にかかわらず、災害等やむを得ない事由によらない場合でも、非課税での払出しが可能です。払い出しした場合は、ジュニアNISA口座は廃止となります。

 

参考: ジュニアNISAの概要 : 金融庁 (fsa.go.jp)

 

◆ 投資の勉強が必要

今後は1800万の非課税枠をどう有効活用するかで、ライフプランも大きく変わります。

 

但し、金融機関の勧めや、ネットの情報を鵜吞みにして、投資するのは避けましょう。

投資は元本保証の無い商品ですので、経済状況によっては元本割れするリスクがあります。

どの程度のリスクで、どの程度の金額を投資するか慎重に判断してください。

360万の年間投資枠を使い切るには、相当な収入が無いと難しい金額です。生活資金や、予定の決まっているお金まで投資につぎ込むのは、絶対にしないようにしてください。

 


贈与税と相続税の公平化(暦年贈与見直し)

数年前から、暦年贈与が廃止されるかも?というウワサが出ていましたが、今回の税制改正でその一歩が始まりました。

 

暦年贈与(非課税枠110万円/年)を利用して、相続財産を減らすという相続税対策が行われてきました。このことに関して、贈与税と相続税は公平性の観点で一体で課税すべきとの考えから、暦年贈与の見直しが議論されていました。

 

今回の改正で、今まで相続時の持ち戻し期間が3年だったのが、7年前まで遡って持ち戻しとなります。

 

この変更は、令和6年(2024年)1月1日以後に、贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。

 

今回追加された4年分については100万円を控除することになっています。つまり、下図の例では440万円-100万円の340万円、持ち戻しが増えることになります。

 

12/27 追記

相続時に相続財産に持ち戻しが必要なのは、相続、遺贈、相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人となっています。

例えば相続人では無い孫が暦年贈与で生前に財産を受け取っても、持ち戻す必要が無いということになります。

 

税金のルールってよっぽど頭の良い人が考えているのか、複雑ですね。 

 

暦年贈与の改定 2023年税制改正 (筆者作成)
暦年贈与の改定 2023年税制改正 (筆者作成)

上記の図は毎年110万円を10年間贈与し、相続発生が2033年の場合の例です。

 

※ 持ち戻し対象の7年間で、110万円を超えて贈与を受けた場合、相続時にはその時支払った贈与税が相続税から税額控除されます。

参照:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁 (nta.go.jp)

 

参考:

今回の税制改正で、相続時精算課税制度についても改正が行われています。

特別控除の2500万円とは別に、新たに110万円の基礎控除枠ができます。この基礎控除枠は暦年控除とは別物で、110万円以下なら贈与税も相続税もかかりません。また、贈与税の申告も不要となっています。

 

なお、一度相続時精算課税制度を選択すると取り消すことができません。

暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを使うのが良いかは、その人の年齢や相続人か否かなどにより変わりますので、慎重に検討してください。