預貯金は遺産分割協議の対象外?

ご存知でしたか? 朝日新聞10月20日の記事にもありましたが、過去の判例では預貯金は遺産分割(協議)の対象外となっています。

過去の最高裁判例では、以下の通り預貯金は遺産分割の対象外とされてきました。わかりやすく言うと、「預貯金と借金は民法の定める法定相続分で分けるべき」だと言っています。

 

「相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。」(最判昭和29年4月8日)

 

 しかし、その一方で「金銭(現金)は遺産分割(協議)の対象である。」となっています。生前に銀行から引き出した現金は、遺産分割協議を行ってわけなさい。預貯金は法定相続分でわけなさい。と、わけのわからない事になっています。また、現実に金融機関に行くと、遺産分割協議書など必要な書類が無いとお金が引き出せません。判例に従うなら、相続人は法定相続分を引き出せる権利があるわけですが、現実にはそのような運用になっていません。事実、家庭裁判所でも多くの場合、預貯金についても遺産分割協議の対象として扱われ、調停や審判が行われています。預貯金の分割方法について、現在最高裁で争われていて、年内にも現実に即した判決が出るようです。

 

今回最高裁で争われている概要

預貯金が3,800万円あり、相続人は兄弟2人(A,B)。Aは生前に5,000万円生前贈与(特別受益)を受けていた。

Aは過去の判例通り、法定相続分で1,900万円ずつ分割を主張、Bは、Aの特別受益を考慮すると3,800万円はすべて自分が受け取る権利がある。と争っています。

 

5,000万円贈与の内容が不明なので、事業継承等がからんで単純では無いのかも知れませんが、常識から言えばAは生前に5,000万円貰っている上に、1,900万円も欲しい、というのは欲張りすぎではないでしょうか?

1審、2審は過去の判例通り法定相続分1/2で分割を支持していますが、最高裁ではどうでしょうか。裁判所の良識が問われる事案ですね。